
『古さ』は魅力になる
築47年マンションをスケルトンから再生した空室対策リノベ
前回は、私自身が所有する賃貸物件でのリノベ事例をご紹介しましたが、今回は立場を変えて、オーナー様からご依頼を受けた築47年マンションの再生プロジェクトをご紹介します。
長年お住まいだった入居者様のご退去をきっかけに、空室対策としてリノベーションをご検討いただいたこの物件。
築年数だけ見れば“古い”と言われがちな物件ですが、工夫次第で“唯一無二の魅力”を持った住空間へ生まれ変わることができる──それを体現する事例となりました。
Before:昭和型3DKの課題

かつて主流だった3DKの間取りは、今の暮らし方にはマッチしづらい構成。
細かく区切られた空間は圧迫感があり、和室も多く、家具の配置にも不便がありました。
加えて、水まわり設備や内装の劣化も進行し、築年数以上に“古さ”を感じさせる状態でした。
After:スケルトンから再構築された開放的2LDK

内部を一度スケルトン(骨組み)状態に解体し、間取りを再構成。
暮らしの中心となるLDKをワイドに確保し、2LDKへと刷新しました。空間の広がりと機能性を両立させたプランです。
◆ 天井を“見せる”ことで、広さと個性を演出
本プロジェクトの象徴的な仕上げが、天井の仕上げ材をあえて取り除き、コンクリートの質感をそのまま活かすデザインです。
BEFORE

AFTER

通常はボードやクロスで隠してしまう天井を“むき出し”にすることで、天井高がアップし、開放感のある空間に。
また、素材の無骨さが空間にラフで味わいのある雰囲気を与え、カフェやスタジオのような、かっこよく洗練された印象に仕上がりました。
BEFORE

AFTER

照明もライティングレールで柔軟性を持たせ、シンプルながら印象に残る空間演出を意識しています。
◆ 対面キッチンで、空間に“つながり”を
壁付けだったキッチンは、リビングとつながる対面式へ変更。
調理中でもリビングの様子が見渡せるため、家族や来客とのコミュニケーションが自然と生まれる配置になりました。
背面には収納と冷蔵庫スペースをすっきりまとめ、使いやすさと見た目の両方を確保しています。
BEFORE

AFTER

◆ 水まわり・洋室も一新して使いやすく
浴室・洗面台・トイレといった水まわりはすべて新しい設備に刷新。
白を基調とした清潔感あるデザインで、毎日使う空間だからこそ快適性にこだわりました。

また、個室にはダークグレーのアクセントクロスを施し、シンプルながら印象に残る個性を演出しています。
BEFORE

AFTER

家賃1.6万円アップ、それでも“わずか20日で成約”
このリノベーションによって、従来よりも1.6万円高い賃料設定で募集を開始しましたが、反響は非常に良く、
募集開始からわずか20日という短期間で入居申込が入り、成約に至りました。
築47年というスペックでも、「デザイン」「快適性」「暮らしやすさ」のすべてにおいて丁寧に再構築すれば、ターゲット層の心を掴める物件へと変わる──それを実証できたプロジェクトです。
オーナー目線で考える、空室対策の本質
私自身も賃貸オーナーとして感じるのは、“築古=不利”ではないということ。
むしろ、築古だからこそ「どう再設計するか」によって、資産としての価値が大きく変わる余地があると考えています。
家賃を下げて空室を埋める時代は終わりつつあり、これからは**“選ばれる部屋をどう作るか”が問われる時代**。
その鍵となるのが、まさにこうしたリノベーションによる価値の再構築です。
最後に
空室や築年数でお悩みのオーナー様へ。
まずは一度、『今ある物件の可能性』に目を向けてみませんか?
“古さ”をただのマイナスとせず、個性として活かす設計力と提案力が、空室対策における最大の武器になります。
今後も実例を交えて、賃貸経営に役立つ情報をお届けしてまいります。