賃貸物件を所有している場合、各種点検を適切に実施することは所有者としての重要な責務です。これらを怠ると法的違反となる可能性があり、事故が発生した場合には所有者が責任を負う場合もあります。入居者の安全を守り、リスクを軽減するために、点検項目を一つずつ確認しておきましょう。以下に主要な点検項目を整理しました。

1. 消防設備の点検

消防法第17条3の3に基づき、半年ごとの「機器点検」と年1回の「総合点検」が義務付けられています。以下の消防設備について、資格者による点検が必要です。

 ■ 機器点検
   消火器具、誘導灯、屋内消火栓、自動火災報知設備など

 ■ 総合点検
   屋内消火栓設備、自動火災報知設備、避難器具、排煙設備、配線など

定期的な点検を確実に行い、万が一の災害時にも対応できる状態を維持しましょう。

2. 水道設備の点検

水道法第34条の2に基づき、清潔な飲用水を提供するための点検と清掃が必要です。特にアパートに受水槽がある場合、外観検査や水質検査(濁りや臭気の有無)が求められます。給水ポンプを使用している場合は、電気系統や槽内の点検も忘れずに実施しましょう。

さらに、浄化槽を使用している場合は浄化槽法に基づき、以下の点検が義務付けられています。

 ■ 設置後3~5ヶ月以内の水質検査

 ■ 年1回の清掃と水質検査

 ■ 3ヶ月ごとの保守点検

入居者が安心して生活できるよう、これらの点検を怠らないことが大切です。

3. 特定建築物・建築設備の定期検査

建築基準法に基づき、1年に1回の定期検査を実施し、その結果を行政に報告する必要があります。以下が主な検査項目です。

 ■ 敷地および地盤

 ■ 建物外部・内部

 ■ 避難設備

 ■ 屋上および屋根

また、検査対象の建築設備には以下が含まれます。

 ■ 換気設備

 ■ 排煙設備

 ■ 非常用照明器具

 ■ 給排水設備

検査は専門家に依頼し、適切なメンテナンスを行いましょう。

4. エレベーターの点検

エレベーターは建築基準法および労働安全衛生法に基づき、1年に1回以上の点検と報告が必要です。事故防止のため、以下の点検内容が求められます。

 ■ 操作盤や制御機構の確認

 ■ 部品の摩耗や劣化状態の点検

メンテナンス契約には「FM契約」「POG契約」があります。

 ■ FM契約: 修理費用を含む包括的な契約(高コストだが安心)。

 ■ POG契約: 修理費用を都度負担する形式(低コストだが必要時に追加負担)。

使用頻度や設置年数を考慮して、適切な契約を選びましょう。

5. 自家用電気工作物の点検

電気事業法に基づき、電気設備の点検が必要です。該当する場合は以下の点検スケジュールを守りましょう。

 ■ 毎月1回の巡回点検

 ■ 年1回の定期点検

 ■ 3年に1回の精密点検

6. 計量器(メーター)の交換

計量法に基づき、水道・電気・ガスメーターの交換が必要です。

 ■ 水道メーター: 8年

 ■ 電気メーター: 5~7年

 ■ ガスメーター: 7~10年

交換を怠ると罰則が科せられる場合があります。

7. 建物全体の点検

法定点検だけでなく、共用部の清掃や外壁の破損確認も重要です。すべてが行き届いている物件は入居者の安心感を高め、空室対策にもつながります。

賃貸物件の維持管理には定期的な点検が不可欠です。所有物件の状況を見直し、適切な対応を行いましょう。